はがね板の逆襲

なぜ地の底で暮らす悪魔に翼があるのかを説明する文書

かつて3人は同じ空の下
同じ大地の上に暮らしていた
体の小さなうちは争いもなく
助け合って生きていた
しかし成長するにしたがって
大地は手狭なものとなっていった
些細なぶつかり合いから始まった争いは
大地の奪り合いへと発展した
戦いは翼の小さい者が勝利し
翼を持つ2人が天へと追いやられた
彼らの脚は大地で戦うにはあまりに細く
かといって空には慣れていなかった
彼らは空に一本の止まり木を浮かべ
それを第二の大地とした

飛ぶ必要のない者の翼は
いつしか消えてなくなった
長い刻が経ち 争いのことを忘れたころ
いつしか彼は翼ある者を敬うようになった

止まり木は第一の台地に比べ
あまりにも狭かった
術によって伸ばす事はできたが
止まり木を成長させるのは大仕事だった
二人が成長するほうが早く
第二の大地もすぐに手狭になった
だが彼らは助け合った 戦っている余裕などなかったから
余裕が出てきたころ 落としあいは始まった
黒い翼の者のほうが空戦に優れ
白い翼の者をさらなる高みへと追いやった

止まり木は彼にとって十分な広さだった
だがそれを彼一人で支えきることはできなかった
彼一人の術で支えられる程度に
止まり木が細くなったころ
彼は白い翼の者の高空からの逆襲を受けた
磨きをかけられた白い翼は
黒い翼を大地へと落とした

翼ある者は大地で敬われたが
彼らは翼無き者の勝手な期待に応えるような存在ではなかった
落ちた翼はふたたび第一の大地を追われ
地の底へと住処を移した

彼は地の底を広い洞穴とし
翼を磨くのに十分な高さとした
支える必要のない第三の大地は
刻とともに彼から逆襲の意を殺いだ
しかし堕天使は今でも悪魔と呼ばれ
天使と対照に忌み嫌われている